趣 旨
現代日本の書道教育は、「手本絶対主義」として批判を受けることが多いです。これは、「規範性」を重視し手本を真似ることに重点を置くため、「個性」教育と対立する面が見られます。手本通りの字形を徹底的に真似し、清書を目指して繰り返し練習することは根気や努力の養成に役立ちますが、「学ぶ内容」や「整える方法」といった具体的な指導が不足しがちです。
書道の本質である筆の線や勢い、調和、連綿といった表現には、単に手本に頼るだけではなく、歴史的背景や書の美しさへの理解も必要です。日本では、「書画同源」の伝統が根付いてきました。書道と絵画、そして作品の落款に使う印鑑を一体化させ、一つの世界を表現することが理想とされています。これは、東洋思想に基づき、人間の精神や形が自然の中で生まれ、自然と共に発展するという考え方が背景にあります。
しかし、近代以降、書画は制度的に分けられ、それぞれが専門職として扱われる教育システムが確立されました。さらに、現代ではコンピュータ技術の普及により、毛筆を使う人が減り、伝統的な日本の文化や芸術の基盤が変化しつつあります。かつて芸術は人々に共感や感動を与え、他者との共生を学ぶ場でしたが、現代では、芸術が商業化する中で、その役割が薄れつつあるように感じられます。
これにより、芸術の本来の価値から逸脱し、作者と観衆の関係も一方通行になってしまいました。伝統書画を次世代に継承するためには、歴史に基づいた技法の保存・発展と同時に、時代に応じた新たな創造が求められます。
今、再びその本質に向き合い、東洋と西洋の芸術を対等に見直すことが重要です。東洋の書画芸術が復興し、その輝きを取り戻すことは私たちの使命であり、現代社会の人間関係の希薄化を解消する手段ともなるでしょう。
2020年より、福岡市をはじめ、多くの市民に書道や絵画を楽しむ機会を提供するために、魚心堂教室を設立しました。毎年、教室の生徒や国内外のアーティストが参加する展覧会を企画・運営し、これを通じて書画印芸術文化の研究を推進し、芸術家と市民の交流を深めています。
これらの活動は、書画印芸術文化の振興および普及に寄与することを目的としています。このような公益性の高い事業を今後も継続的かつ安定的に行うため、自治体や関連団体とのさらなる連携が必要だと考え、「NPO法人国際書画印研究会」を設立して、展開していこうとするものです。
申請に至るまでの経過
2019年3月 魚心堂教室を設立
2020年10月 魚心堂教室第一回展覧会開催
2023年1月 魚心堂教室第二回展覧会開催
2023年5月 魚心堂教室第三回展覧会開催
2024年3月 魚心堂教室第四回展覧会開催
2024年8月 発起人会開催
2024年9月 魚心堂教室第五回展覧会開催
2024年10月 設立総会開催